デジタル時代にもブレないB2B広告代理店の本質(価値?)について床屋で考えてみた
渡 元春
僕は今、いい加減もっさりしてきた髪の毛を床屋で切ってもらいながら、論文すらスマホで書くという今時の若者を見習って、親指でこの文章を書いています。
ようやく緊急事態宣言解除にこぎつけましたが、依然としてイベント開催には遠い道のりが待っていると感じます。
2月末には開催を強行した展示会もありましたが、相次ぐ出展社辞退、外出自粛の風潮の中、散々な結果に終わりました。
今年、大規模なイベントを開催したとしても同じような結果に終わるような気がしています。
今回は、今後も続くデジタル時代における私たち広告代理店の本質とはなんなのか、考察していきます。
コロナで変わったマーケティングの世界
サイバーエージェントが電博の時価総額を上回ったというニュースも出ていましたが、少なくとも向こう1年間マーケティングの主戦場はデジタルだと考えられます。
猿人の仕事もここ数カ月で様変わりしました。
例年なら今頃は展示会が毎週のように開催され、各営業は今の現場を監督しながら翌週以降の展示会の準備を掛け持ちし、会社に戻るのは夜以降、というハードな時期です。
今年は在宅勤務で毎週誰かしらクライアントのオンラインセミナーをサポートし、様々なメディアと集客施策を巡らせたり、WPダウンロードといったリードジェン施策の計画や、猿人オリジナルのオンライン施策の計画も進んでいます。
WEB会議のメリットかつデメリットでもあると思いますがミーティングが1日10本なんて日も珍しくありません。
最近多い仕事のパターンは
●オンラインセミナーを開催したいので企画、運営、集客までサポートしてほしい
●オンラインセミナーを開催するのでプラットフォームや進め方のアイデアがほしい
●イベントに代わるリード獲得施策についてアイデアや提案がほしい
といったもの。
真ん中のプラットフォームのところはいわゆるイベント運営の知見が問われますが、
企画やリード獲得を総合的に考える場合、How toだけではクライアントの期待に応えきれないのではないでしょうか。
広告代理店のお仕事
ところで、そもそも世の中の広告代理店の仕事の流れとして
●~することが決まったのでその実施についてサポートしてください
●成果を出すために有効な施策を考えてください
というのではどちらのパターンが多いのでしょう?
両方あると思いますし、広告主の体制によっても様々でしょう。
広告主がある程度の規模のマーケティングチームを持っている場合は戦略や計画を練るのは全部社内でやれるでしょうから、 決まった施策の実施部分だけ必要に応じてアウトソースすることが多いでしょうか。
逆に小規模や一人でマーケティングを回しているような場合、 実施に使えるリソースはあまりなく、数人で戦略や計画を練ることができないため、相談相手も外部に頼りたいというニーズがあるかもしれません。
イベント関係が多かった頃は前者の仕事がとても多かった印象です。
もちろんそもそもの目的やクライアントが達成したい成果を意識したプランニングは必要ですが、
それはおまけのようなもので、なんだかんだ安定して展示会やカンファレンスを無事に完遂する能力が私達の価値(クライアントからの期待値)でした。
しかし、デジタル施策がメインとなると少し話が変わってきています。
デジタルマーケティングと書くとなんかイケてる感じがしますが、やっていることはシンプルで
●いかにWEB上で集客するか
というお題に対し、なにか着地点を用意して
SEO
リスティング
SNS
メディア
などの方法で呼び込んでくる活動です。
オンラインセミナーは「着地点」の一つ。他にもトライアルや資料ダウンロードなどの着地点にどう持っていってアクションさせるかが命題になります。
そして、知っている方も多いと思いますが、デジタルでの「呼び込み」手法の一つである広告出稿はとても簡単に「実施」できます。
イベントと違い、実施するのにリソースが必要だから広告代理店に頼むというケースはあまりないように思います。
あったとするとものすごくもったいない。
オンラインセミナーだってZoomを契約すればいとも簡単に実施できてしまうし、オウンドメディアなどのコンテンツ発信のノウハウはSNSにも溢れていて、これもまた頑張れば自社でできます。
GoogleやSNSの広告配信も誰でも設定自体はできてしまうし、メディア広告もメディアの営業担当とやれば特に代理店を挟む理由がありません。
ならば広告代理店の本質的な価値とは何なのか
デジタルで重要なことは着地点となるコンテンツの質と、それをどうやって届けるかの設計の部分です。
お客様はどんな課題があり、どんな情報を欲していて、どうやって情報を探しているのか、にドンピシャで当たる方法を模索することに意味があります。
釣りに例えると、大海原から釣りたい魚が好みそうなポイントを探し、その魚が食べたい餌を用意して、その魚が活発になる時間帯に投げ込む。
ポイントや餌、タイミングが合ってないと全く釣れない。そんなイメージではないでしょうか。
私たち広告代理店に求められる期待値は、そうした設計の部分やコンテンツに対しても助力できるかどうか、なのではないかと感じています。
この状況下で初めてデジタルへの転換を迫られている企業は自分たちのやろうとしていることが正しいのかどうかも曖昧なまま、それでも前に進まないといけません。
クライアントの製品、サービス、ターゲット、業界、そして達成したい成果目標を理解した上で、どんな手法で、どんな着地点を用意するのかをクライアントと一緒に考えられるような広告代理店が求められているのではないかと思います。
また、最近メディアの方々とお仕事する機会が増えて、もう一つ重要だと感じていることがあります。
それがメディアとのリレーションです。
リスティングやSNSの広告は機械的ですが、メディアに関しては人対人の仕事です。
メディアにはそれぞれ広告メニューがあり、価格や内容が決まっていますが、カスタマイズや予算調整、成果の調整余地は各担当者のさじ加減とも言えます。
これは実際に最近あったことですが、本来メニュー上は集客数の保証がないメディアが目標数達成をコミットしてくれたり、あと少しで目標達成というところでおまけしてもらったり、そこにはやはり遊びがあるんだなと感じました(全部が全部そうではないですが…)
もちろん、広告主もメディア担当者と良好な関係を築いていれば特に代理店を挟む必要はありません。
ただ、まだ関係ができていない場合は、リレーションがすでに構築されている代理店経由でメディアの力を借りることにより、120%の力を引き出せるかもしれません。
もちろん逆も可能性としてはあるので僕たちはパートナーを大事にしないといけません。
あれ、これってメディアに限った話ではないですね。
関わるパートナーの力を120%引き出す力があるかどうか、これはどんな時代でも広告代理店が提供すべき価値だと思います。
コロナウイルスの状況で広告業界は大きく分断されました。
仕事がなくなったところと、変わらない、あるいは増えたところ。
会社の実力だけでなく、クライアントの業界にも大きく左右されると思いますが、
●~することが決まったのでその実施についてサポートしてください
というThe 実施屋さんはどんなに実施力が高かったとしても苦戦したのではないでしょうか。
●広告・プロモーションの知識だけでなく、クライアントのことをどれだけ理解し一緒に考えることができるか
●コンテンツやメッセージング、プランニングをクライアント目線で考えアウトプットできるか
●パートナーの力を120%引き出せるか
という「代理店」の本質的な価値を提供できているところが強く生き残っているのだと思います。
下手な代理店よりパワフルな内製実施部隊を抱える事業会社も増えている昨今。
そんな本質的な価値を提供できる代理店になれているか、自問自答しながら仕事に励む日々です。
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