猿人流! オンラインイベントのフレームワーク Vol.5 ~初期制作①:Content is still king. ~
土谷 竜介
さて、ようやく初期制作のフェーズまで来ました。いよいよ本格的な制作フェーズに入っていくことができます。
基本計画ではオンラインイベント全体を成功させるための、ざっくりとした大枠を決めたにすぎません。ここからの初期制作は、イベントの各制作要素の個別プランを決め込んでいくフェーズとなります。
初期制作の構成要素
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イベント管理プラットフォームの要件定義
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プラットフォームの選定、開発
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デザインコンセプト開発
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イベントサイトのラフデザイン
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イベントサイトの機能要件定義
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収録会場、配信計画(事前収録vsライブ配信、会場の選定)
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集客計画(社内、広告、ソーシャル、パートナーなど)
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インセンティブ計画
コンテンツプラン【講演】
オンラインイベントのコンテンツは、初期計画と基本計画で決めた「ターゲット」「テーマ」との一貫性を保ちながら、かつ、その範疇内で網羅的に構成されていることが望ましいです。
ここで網羅的と言っている理由は、この規模のオンラインイベントになると、ターゲット視聴者もいくつかのセグメントに分かれたり、幅があったりするため、それぞれのターゲット視聴者層に対して魅力あるコンテンツをお届けできるようにするためです。もちろん、集客効率を上げるためでもあります。
イベントの構成要素が、「講演」と「展示」であったとして、ここでは「講演」のコンテンツを対象に網羅的にするための手法をひとつご紹介します。一般的なBtoBオンラインイベントであれば、下記の3つが定番でしょう。
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基調講演(キーノート)
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特別講演(スペシャルセッション)
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通常講演(レギュラーセッション)
これらを下図のような2軸4象限でセッションコンテンツをマッピングしていきます。この例では、縦軸を「有識者・顧客企業」⇔「自社・パートナー・スポンサー」、横軸を「ビジネス」⇔「テクノロジー」としてマッピングしています。
繰り返しになりますが、ここでの目的は、このイベントが対象にしている複数のターゲットセグメントに対して、網羅的にコンテンツを配置することです。上図の例で言うと、基調講演はいずれも市場の現在動向や将来動向、自社の戦略的な話題を提供するビジネスコンテンツをお届けする場と据え、図上の左側象限に配置しています。
CEO講演、CTO x 外部識者対談、業界著名人講演、などで構成する形です。最新のテクノロジーや具体的なソリューションを解説するコンテンツは右下象限、導入事例などを紹介するコンテンツを右上象限に配置して網羅性をキープするための目安としています。
マップの軸を何にするかは、イベントのテーマに依存して決めるのが妥当ですが、ここは頭の使いどころ、腕の見せ所になります。2軸ではなく、マトリックスで考えてもいいでしょう。
また、単独プレゼン形式や対談形式、パネルディスカッション形式、トークショー形式などを、講演形態をどうするかも合わせて検討しても良いです。
一般的に対談形式やパネルディスカッション形式は、セッションそのものの内容が面白くなりますが、それだけではありません。視聴画面的にも複数の被写体がカメラワークとともに切り替わっていき、リズム感のある飽きのこない充実した映像コンテンツとなります。
だいたいの講演コンテンツが見えてきたら、基本計画で策定したタイムテーブルに講演コンテンツを埋めていきます。マップとタイムテーブルを睨めっこしながら、両者を行ったり来たりしながら、決め込んでいきます。
外部基調講演のキャスティングとストーリー設計
基調講演(キーノート)や特別講演(スペシャルセッション)は、最も多くの視聴者が訪れるイベントの顔であり、集客の要でもあります。
魅力的なコンテンツと集客面の貢献を考えると、市場の現在重要と一歩先の未来に対するインサイトを語れる外部の著名な有識者や、抜群の知名度を持つタレントを招くような講演は、大規模オンラインイベントでは必須と言えるでしょう。それゆえ、外部基調講演や特別講演者のアサインは、この段階で早々に動き出す必要があります。
特に人気の高い識者をアサインしようと思うと、候補者の選定や社内検討、スケジュール確認、依頼したい講演内容の作成と打診など多くの工数を要しますので、動き出しは早いにこしたことはありません。可能であれば、基本計画前半でイベント概要が定まった後の、基本計画後半フェーズから始動してもいいくらいです。
コンテンツプラン【展示】
オンラインイベントに訪れる来場者は何を見に来ているのか? 言うまでもなく、それは講演です。
多くの来場者は、業務で多忙な中、なんとか時間をひねり出してイベントページにアクセスしてくれており、まずはお目当ての講演を視聴します。ソリューションを紹介する展示要素を設ける場合は、講演からの導線をしっかりと考慮する必要があります。
したがって、講演のコンテンツを考えるのと同じように、展示コンテンツもイベントテーマとターゲットに合わせて準備をすることになります。出したいものを出せばいいというものではなく、講演コンテンツに関連する、または講演の中に登場するソリューションの詳細を説明した資料や動画を用意していく方法がセオリーと言えます。
また、掲載するボリュームについて、どの程度の量を掲載するべきかを冷静にプランしてください。少なすぎても来場者の期待を裏切りますし、多すぎても欲しい情報に辿り着きにくくなります。また、掲載コンテンツが多いと、社内や社外の製品担当者が準備をするコンテンツ量も増えてしまいますし、イベントサイト制作にかかるコストも比例して上がります。
少し話が逸れますが、オンラインでも製品やソリューション紹介をメインに据えるのであれば、バーチャルEXPOとして展示をメインにしたイベント企画にする手もあります。
(これは初期計画時に検討するべき項目ですが)
スポンサーリクルーティング
基本計画の回でお伝えした通り、スポンサープラン(協賛依頼書)はプランの内容も料金設定も、業界や企業によって多様ですので、このブログでは省きます。
ただし、ロゴを掲載するだけの単純なスポンサープランを除くと、講演枠の提供や展示枠の提供が含まれたり、ノベルティなどグッズ協賛などが含まれたりすることが多く、これらは今後のイベント制作に大きく影響します。スポンサーする企業にそれなりの準備負担がかかるため、しっかりと検討してもらうための時間を確保する必要がありますので、協賛依頼への声掛けは遅くともこの段階でスタートしましょう。
今回のブログで仮定しているオンラインイベントであれば、目安として10社~数十社のスポンサーを狙っているため、少なくとも半年以上前には声掛けをスタートしないといけませんね。
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候補企業リストの作成
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スポンサープランの提案
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お申込み
アタックリストを作成し、誰がどこに提案するかの担当を決め、目標数 (または獲得金額) を定めて申込を獲得する。なんだか営業活動みたいですが、とても大事なステップとなります。
イベント事務局の設置
スポンサーへの協賛依頼をスタートする前のタイミングでイベント事務局も設置しておくようにしましょう。ここでいうイベント事務局とはスポンサー事務局のことを指します。
いざ協賛してもらえることになったあとの各種スケジュールのお知らせや収録の日時調整、スポンサープランに沿った提出物の提出依頼など、イベント開催までにスポンサー各社とのやり取りの量は膨大なものになります。大切なスポンサーとのコミュニケーションは、円滑かつホスピタリティある対応が必要になりますので、経験豊富で信頼できる事務局を設けることが重要です。
スポンサー事務局の他にも、講演者事務局や一般登録事務局なども設置します。稀にこれらの事務局機能を社内に持ってしまうイベントがありますが、あまりお勧めはしません。講演情報や出展情報、登録情報の詳細など、事務局には全ての重要情報が集約されてくるのと同時に、その情報量とメールなどのコミュニケーション量たるや膨大なものとなります。
これらの各種イベント事務局機能を社内に抱えてしまうと、イベントの実務担当者が事務局業務に忙殺されてしまい、本来やるべきイベントプロデュースというミッションがおろそかになってしまいます。成し遂げるべき成果を見失うことなく、集中して自身の業務に集中できるよう、やはり信頼できるプロに任せることが大事です。
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